オーナー社長だからできる「節税と資産づくり」
オーナー経営者の現状を考えると「将来の保障がない」「納税の悩みが尽きない」という問題があります。一方、さまざまな投資や資金運用で資産形成を確実にしたいと考えている経営者もたくさんいます。このコーナーでは、いかにオーナー経営者の老後を豊かにできるかという観点で、節税と資産形成のノウハウを解説します。
第1回は執筆者のひとりである児玉博利税理士が役員給与を見直す際の注意点について説明します
児玉博利氏
最近は経営環境が厳しくなったこともあり、従業員の人事制度について成果主義を導入する企業が増えてきました。そうしたなかで、経営の舵取りをしている役員についても同様に成果が問われ、役員給与の支給形態が見直されています。これは「年功序列」より「成果」を重視する時代の流れともいえます。
役員退職金についても、年功序列型の体系を改める動きが進んでいます。
これまでは、退職金規定を設け、退職時の報酬に在位期間などを掛けて算定する方式が一般的でしたが、この方式では年功序列的な色合いが濃く、在任中の実績に関係なく一律で計算されてしまいます。また、会社の業績に対する功績が支給額に反映されないため、株主に対してうまく説明ができませんでした。
そこで、最近では企業業績に対する役員の貢献度をより評価し、貢献の度合いが役員給与に正しく反映されるような支給体系がつくられるようになりました。年功序列的な「役員退職金」から、成果主義的な「役員賞与」へと移行する企業が増えてきているのです。
役員賞与における改正のポイント
これまで役員賞与の支給は、株主総会で承認された確定計算の利益を処分する形(利益処分方式)で行なわれてきました。これには、その会計期間の貢献に対する報酬としての性格がありました。また、税制においても役員賞与は全額損金不参入というのが原則でした。
しかし、平成14年の商法改正で役員の業績連動型報酬が導入され、最近では役員賞与を企業の経費として取り扱うようになりました。
平成18年に施行された新会社法では、役員賞与と役員報酬が業務執行の対価とみなされ、会社から受け取る財産上の利益として支給手続きが一本化されました。支給額について定款に定めがない場合は、株主総会の決議によって定めることになりました。また、企業会計基準においても、役員賞与は役員報酬と同様に、発生した会計期間で費用処理することとされました。
改正後の法人税法では、役員報酬・役員賞与・役員退職金の区別がなくなり、まとめて「役員給与」と表現できるようになりました。さらに、一般的な役員給与で損金参入できるものとして、改正前とは異なる区分が設定されました。
損金参入できるものは「(1)定期同額給与」「(2)事前確定届出給与」「(3)利益連動給与」の3つに限られるようになったのです。
なお、役員給与については、事前に決められている給与が条件を満たせば損金に参入し、後で決めた給与は損金に参入しないというルールも決められました。事前に決めたものであれば利益操作もなく、税の基本理念である「課税の公平性」を遵守しながら実務に対応できるからです。
定額同額給与とは?
「定期同額給与」とは、役員に対して定期的に支給され、かつその事業年度の支給額が同額の給与のこと。「定期的」とは、毎日、毎週、毎月のように、1月以下の一定期間のことを指します。定期同額給与は次に掲げる4つに限られます。
(1)同一事業年度内の定期同額給与
(2)改定前・改定後の定期同額給与
(3)経営状況の悪化などで減額改定された前後の定期同額給与
(4)毎月おおむね同額の経済的利益
※事前確定届出給与である場合は損金算入する
定期同額給与は、給与を変更する時期が問題になります。変更する場合は、その事業年度開始日から3ヵ月以内に実施しなければなりません(経営悪化などを理由に減額する場合を除く)。さらに、改定前・改定後の給与がそれぞれ定期同額であることが求められます。
役員給与の増額改定に伴い、期首にさかのぼって差額を一括支給したい場合は、さかのぼって増額する金額を、株主総会の翌月から決算期まで均等に配分し、定額同額給与にします。あるいは、後述する「事前確定届出給与」の適用を受ければよいでしょう。
役員給与の自由度を高める事前確定届出給与制度
法人税法の改正前は、役員賞与は利益の処分と考えられ、損金に算入できませんでした。しかし改正後は、役員賞与を事前に決めて所轄税務署に届け出ることによって、損金として算入することが可能になりました。これを「事前確定届出給与」といいます。事前確定届出給与とは、定期同額給与、利益連動給与を除く給与で、その役員の職務について所定の時期に確定額を支給する旨を定め、その規定に基づいて支給するものです。
事前確定届出給与を支給する場合は「職務の執行を開始する日」「会計期間開始日から3ヵ月を経過する日」のいずれか早い日までに、所定の事項を記載した「事前確定届出給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出します。
「職務の執行を開始する日」とは、一般的には定時株主総会の開催日です。役員は株主総会の決議によって選任されるので、会社との委任契約が成立した時点で、職務執行を開始するとみなされるのです。
また、法人税法施行令では「役員給与に係る職務の執行を開始する日」となっています。役員の任期の開始日ではない点に注意してください。
事前確定届出給与の注意点
「事前確定届出給与」の制度を利用すれば「毎月異なる額の支給」「特定月のみの支給」「四半期ごとの支給」など、役員給与を柔軟に支給できそうに思えます。しかし、注意すべきは「事前に届出をする」ことです。
あらかじめ支給額・支給時期を決めて届け出なければならないということは、業績の良し悪しを踏まえて支給することができないということです。
したがって、前述の「定期同額給与」で対応できないかどうか検討したうえで「事前確定届出給与」の利用を考えることが必要でしょう。
税理士法人児玉税経・代表税理士 児玉博利
1966年生まれ。「税理士はサービス業」という視点に立ち、開業支援、会社経営分析、相続税対策、売上増支援などを積極的に展開している。
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[2007年10月12日] オーナー社長だからできる「節税と資産づくり」


