明日のリーダーシップ
シンクタンク藤原事務所所長
藤原直哉(ふじわら・なおや)氏

2008年はアメリカ大統領選挙の年です。ブッシュ政権も終わりを迎えるので、アメリカも大きく変わっていくでしょう。ブッシュが共和党だから、次の大統領は民主党から出るのでは?とも思ったのですが、現在はサブプライムローン問題の真っ只中。富裕層へのうらみが国内では湧き上がっています。この状況では、〝金持ち集団〟の民主党は不利になるかなとも感じています。
一方の共和党指名候補者に、ロン・ポールというテキサス州出身の下院議員がいます。彼は「夢見るのはやめよう」「現実をもう一度見つめ直そう」と、海外のことではなく自国アメリカのことをしっかり直視しようと説いています。「国税庁や中央銀行、CIAは、国民に正常に寄与していないから廃止すべき」とか「軍隊は海外ばかり構っていないで戻ってこい」と、過激なことばかり言っていますが、迫力がありますね。意外と番狂わせで次期大統領になってしまうのでは、なんて可能性も感じています。
というのは、ロン・ポールは、現在のような激動の時代が求めるリーダー像に近いからなのです。
川の流れが場所によってゆったりとしていたり、激しかったりするように、時代の局面も変化しています。求められるリーダーシップも、その変化に応じて当然変わってきます。これまでの10年はデフレ型経営といって、ゼロ金利とリストラでリーダーは乗り切ってきました。しかし、これからの時代は激しく動いていきます。ですので、リーダーも変化しなければなりません。
「これではダメだ!」と現実を知らしめることが不可欠
日本ならば幕末や敗戦の時代でしょうか、時代が変わろうとする直前の時期というのは、皆が現実を見ようとしないのです。今もまさにこの時期にあたります。本当は不況なのに「景気がいい」なんて言ってみたり。そうでも言わないと元気になりませんからね。しかし、現状は一人あたりのGDPは下がっていますし、貧富の格差は開く一方。治安もよいとは言えなくなってきました。
この変動期に求められるリーダーシップには2つのポイントがあります。
ひとつめは、現状をあらわにして「これではダメだ!」と訴えること。これは本当に辛いことでもあります。しかし、現実を知らしめることで、みんなが「では、どうすればよいか」と考えるようになるのです。
2つめは、みんなの気持ちとエネルギーをまとめ、ひとつの方向に持っていくことです。現在の組織はリストラや過度の効率化を求めて殺伐としています。ここでトップが上から締め付けると、組織はたちまち空中分解してしまうのです。時代が変化しようとしているときは、一人では何もできません。結束した組織の力が求められます。リーダーは、メンバーみんなが「こうすると楽しい、こうなりたい」と思うであろうツボを見つけ、同じ方向に向かって進ませ、その気にさせることが大事です。今の時代は各メンバーの気持ちがついてこないとうまくいきませんから。
ロン・ポールのようなリーダーシップを持った人物は、今のところ日本には出てきていませんね。そんな時代に求められるリーダーが、政界・財界はもちろん企業や組織から出てくるかどうかが、今後の日本のカギを握っていると思っています。
シンクタンク藤原事務所所長 藤原直哉(ふじわら・なおや)氏
1960年東京都生まれ。83年東京大学経済学部卒業。住友電気工業、経済企画庁経済研究所、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券などに在籍した後、シンクタンク藤原事務所を設立。経済、政治、国際情勢、リーダーシップに関する分析を行い、NHKをはじめ各メディアで独自の理論を発表しているほか、コンサルティング、社内教育、講演、執筆活動を行っている。
[2007年12月12日] 明日のリーダーシップ


