特集 「黒字だから倒産しない」と思い込んでいませんか?

英会話学校NOVAはキャッシュリッチ体質だった
昨年10月に破たんした大手英会話学校「NOVA」は、受講料を先取りする「前受金ビジネス」の典型。実はキャッシュリッチになれる要素に満ちていたのだ。
では、なぜNOVAは破たんしたのか。何年も先の分の受講料を一括で受け取り、前受金に計上したが、それを運転資金と先行投資に注ぎ込んだからだ。
ご存知だと思うが、前受金は決算書上では負債勘定で処理される。手元のキャッシュを増やすためには有効だが、実は自分の資金ではないのだ。前受金ビジネスを始める際は、ここを勘違いしないでいただきたい。
NOVAは多額の前受金をどこに注ぎ込んだのか。それは、急激な教室増による徹底的な拡大路線が関係している。これではいくらキャッシュを蓄えても足りない状態だったと思われる。
NOVAのウリは「駅前留学」と低価格な受講料。低収益ながらも、駅前に教室を出すという高コストから、構造的な矛盾を抱えていたのである。これを解決するには、まず内部コストを抑える仕組みをつくらなければならない。しかし、NOVAは仕組みをつくる前にいたずらに拡大路線を突き進み、前受金では足りない分を借入金でまかなった。その結果は、直近決算による自己資本比率5.1%という数字となって表れている。
さらにNOVAはコストダウンを講師の削減にて実行。しかし、講師が減ると授業の予約がとりにくくなる。生徒の不満は募り、中途解約者が増加。そうなると前受金が減る。まさに「負のスパイラル」に陥った。それゆえ、中途解約金の精算でアンフェアな手を使ってでも資金の流出を食い止めようとしたのだろう。
多数の中途解約トラブルから、昨年6月に経済産業省が特定商取引法違反の行政処分として、NOVAに対して1年を超えるコース及び70時間を超えるコースの新規契約を半年間停止した。私はこの報道を目にした瞬間に「NOVAはもう駄目だ」と直感した。頼みの綱である前受金の入口がふさがれた時点で、資金が行き詰まるからだ。
会計事務所は税務申告の代理人?
NOVAの事例は決して極端ではなく、中小企業でもよく起こりうることだ。NOVAにはキャッシュフロー経営の観点で助言できる立場の人間が社内外にいなかったのだろう。中小企業の場合、そのポジションに相当するのは会計事務所にほかならない。会計事務所は会計のプロフェッショナルだからだ。
この特集を読んでいる経営者は、会計事務所をどのようなポジションとして考えているだろうか。
もし、単なる「税務申告の代理人」ととらえているのならば、ビジネスの成功はありえない。経営者の夢を実現するために「会計」の観点でキャッシュリッチになるための指導をしてもらうパートナーと考えることが大切なのだ。
会計事務所を単なる「申告屋」ととらえている経営者は、顧問料が安ければ安いほどいいと思っている。しかし、顧問報酬の安さで会計事務所を選ぶ時代は、もう終わったと私は考えている。
例えば、毎月の顧問料に5万円を支払うことについてどう考えるか。もし難色を示すようなら、決算内容の診断、経営計画の立案、キャッシュフロー経営の実践など付加価値の高いコンサルティングを受けることが難しいだろう。
これからの中小企業には、会計を通じた経営指導が不可欠。会計事務所に対する報酬は、しっかりとした金額を支払うべきというのが私の持論だ。そして、報酬に見合うだけの仕事を要求したほうがよい。
キャッシュフロー経営を実践する上で大切な財務諸表は「キャッシュフロー計算書」。これは中小企業の経営者にとってなじみが薄い。キャッシュフロー計算書の作成、公開が義務付けられているのは上場企業だけで、中小企業の場合は金融機関から要請があったときに作成する程度だからだ。
「貸借対照表、損益計算書はなんとなく理解できても、キャッシュフロー計算書はまったくわからない」という経営者は多いのではないだろうか。
私は「これからの経営者はキャッシュフロー計算書をスラスラ読めないと」とは思っていない。しかし、どういう理由で会社にキャッシュが入り、出ていくのかという流れを把握することが非常に重要なのである。
それをわかりやすく説明するのが会計事務所の役目。だから経営者は、現在顧問契約を結んでいる会計事務所を、単なる税務申告の代理人ではなく、会社を伸ばすためのポジションととらえて付き合っているのか振り返ってもらいたい。それが、あなたの会社が強くなる第一歩なのである。
NOVA破たんのもうひとつの原因には「権限集中」があった!
NOVAの破たんは財務面だけでなく、人的な面にも一因がある。それは、創業者の猿橋望氏への権限集中だ。
アイデアマンとして知られる猿橋氏。創業当時は珍しかった少人数制レッスンや、外国人講師の大量採用システムを立ち上げた実績は、業界に新しい風をもたらした。また「駅前留学」「いっぱい聞けていっぱいしゃべれる」などのキャッチコピーや「NOVAうさぎ」といったユニークなイメージキャラクターは猿橋氏のアイデアが下敷きにあった模様。同氏はビジネスだけでなくクリエイティブな面でも才能を発揮していた。
一方、NOVAがジャスダックに提出した改善報告書には、ほとんどすべての事案に猿橋氏の決裁が必要な組織構造だった点が記されている。権限がトップに集中すると、業務の非効率化をもたらすのは明らか。皮肉なことに、猿橋氏の有能さが招いた悲劇ともいえる。
中小企業でも、権限がトップに集まると業務の非効率化を招く。そして、幹部や社員は「考える頭」を失ってしまう。どんなに一生懸命アイデアを出しても、社長が細部まですべてを決めてしまうのでは、幹部や社員はやる気がなくなってしまうのだ。やがて社員は「よいアイデアを出す」ことより「社長が気に入りそうなアイデアを出す」ことばかり考えるようになる。こうなっては本末転倒だ。
今回の件でいえば、講師への給与未払い→授業の質の低下→中途解約→トラブルという流れになる。サービス業にとって大切な「受講者の視点」が欠けていたといえるだろう。しかし、こうした基本的な視点について進言する幹部がいなかったことからも、NOVAの権限集中の根深さがうかがえる。
権限を任せることは「自ら考える社員」の育成に直結する。NOVAの事例から権限委譲の大切さを学ぶことができるだろう。
キャッシュリッチになることとは、単に現金を貯め込むという簡単なことではない。決算書の中身を把握し、キャッシュが増えない原因を分析することが求められる。それができるのは、会計のプロコンサルタントである会計事務所にほかならない。
今付き合っている会計事務所とは、うまくコミュニケーションがとれているだろうか。会計のことでわからないことがあったり、サービスに不満があったとき、きちんと口にして提案しているだろうか。そうした提案が受け入れられないときは、会計事務所との付き合いを見直し、場合によっては別の事務所に替えたほうがよい。
しかし、一口に会計事務所と替えるといっても、一目では違いがわからない。もし、どの会計事務所にしようか迷っている場合は、FANアライアンスに加盟している会計事務所に相談してみよう。どの事務所も当特集に書かれているスタンスにのっとり、中小企業の黒字経営をサポートしている。
FANアライアンス本部までご連絡いただければ、御社のお近くの会計事務所をご紹介いたします。お気軽にご相談ください。
●プロフィール
(株)アックスコンサルティング代表取締役 広瀬 元義
“黒字経営を実現する会計事務所の会”FANアライアンスを主宰。また、中小企業や会計事務所の経営コンサルティング、Webコンサルティング、出版事業等を手掛けている。著書は2007年年間総合19位(「日経ビジネス」調べ)の『イン・ザ・ブラック』(あさ出版)をはじめ、多数執筆。
[2008年3月14日] トップ特集


